次に福音主義に関しての正教会(Orthodox Church)とか東方諸教会(Eastern Orthodox Church) の立場です。正教会は神学的枠組みや歴史が西方教会とは多分に異なります。そのため、福音派と自由主義神学といった議論の軸そのものが存在せず、従って「福音派」も「リベラル派」も存在しません。西方教会(Western Christianity)で福音派と言った場合には「保守的」「守旧的」との表現と共に語られる場合もありますが、東方教会の文脈で用いられる「保守派」は福音派とは全く別系統の概念となります。
「正教会は名実ともに伝統的である」との言及がされることは正教会内部からも多いのですが、この場合の「伝統的」が指す概念や観念は西方教会における福音派の「保守的」が指す概念とは全く次元が異なるといわれます。
アメリカ合衆国における福音派は、有名な「進化論論争」や、また昨今は「宗教右派」とかなり重複していることで世界的に有名になっています。20世紀初めには、禁酒法制定運動(temperance movement) に大きな貢献をした元大リーガーの伝道師ビリー・サンデー(Billy Sunday) が福音派信者を大きく増加させます。現代史からは、1950年代の冷戦の頃から無神論を嫌って反共主義の立場に立つ伝道師ビリー・グラハム(Billy Graham) が大きな影響力を持ちました。1960年代には聖書を都合に合わせて解釈し、公民権運動に反対するグループが現れ、70年代からは妊娠中絶合法化(legalization of abortion) を求める女性放運動やその後のフェミニズム運動もありました。
しかし、政治的立場は必ずしも右翼とかタカ派一辺倒とは限らず、例えば共和党でもマーク・ハットフィールド(Mark O. Hatfield)のような議員もいいます。ハットフィールドは、党派を超えたリベラルな良心派として知られ、ベトナム戦争への反対や核兵器廃絶の訴えなどで大きな足跡を残しました。メノナイト(Mennonite)の再洗礼派−アナバプテスト系(Anabaptist)教派やクエーカー(Quaker)のように歴史的平和教会の立場を取り、聖書の使信は平和主義であると唱える教派も多いのです。
メノナイトは、16世紀の宗教改革期にヨーロッパで起きた再洗礼派から生まれたキリスト教プロテスタントの一派です。創始者であるオランダ人の牧師メノ・シモンズ(Menno Simons)の名前にちなんで名付けられました。幼児洗礼を退け、本人の自発的な信仰告白に基づく洗礼や、徹底した平和主義や非暴力を貫くことで知られています。


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